現代不思議忌憚異聞録

日本・世界各地・そして宇宙まで我々が見・聞き・体験した摩訶不思議な怪異憚をつらつらと採録して行く。

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第九十二夜 フランス人形 01/20

さて、久し振りの話は、風熊にお願いしよう。

彼の実家に今も健在な母上は、元々は東京生まれの東京育ちで、結構な家のお嬢様だったらしい。
自分も十年以上前にお逢いした事が有るが、お洒落で若々しい女性であった。
彼女は可愛らしい服や小物、そして人形が好きでコレクションしていたのだが、
独身時代に手に入れた一体のフランス人形には、哀しい記憶が閉じ込められていたと言う。

それでは、お聞き頂こう……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~どうも、お久し振りの風熊です。
このブログに関わる面子も色々と有りましたが、再び皆様に怪異譚をお届け出来る様になり嬉しい限りです。
これからもどうぞ、よろしくお願い致します。

さて、Jの前置きにも有りますが自分の母はもう還暦を過ぎてはいますが非常にハイカラな人で、
いまだにお洒落や小物に拘りちょこちょこと集めています。
もちろん若い頃にはそりゃもう色んな意味で目立つ人だったらしく、
また様々な方面の専門家などとも親しく実家には中々怪しげなブツが転がっています。

その中で幾つか、母や自分、家族に不可思議な体験をさせてくれたモノをご紹介しましょう。
今回はまず、母が独身時代に手に入れたアンティークなフランス人形のお話しをさせて頂きます。

母が浅草で開かれた蚤の市で彼女を見つけた時、指や耳などアチコチ細かく欠けていて、
また美しい金髪も着ているドレスも薄汚れていて状態はかなり悪かったそうです。
しかし、一般的なフランス人形は無表情に近い事が多いのですが、彼女は小さく、
何とも言えない芳醇さを感じさせる微笑を浮べていて、
母はその可愛らしさに参ってしまい意外と高く付けられた値段をギリギリまで値切って買い求めました。
そして、持ち帰る途中にその足で馴染みのドールショップに修理に出したのですが、
見積もりする為に彼女を手にしたドールショップのマスターは驚き、
彼女が非常に貴重な、百年以上前に創られた人形だと鑑定したそうです。
また、美しい金髪は本物の毛髪が使われている、とも。
マスターは破格の値段を提示して譲って欲しいと母に頼みましたが、
すでに彼女の微笑みに魅入られていた母は丁重に断り、髪は交換しない様に修理を依頼しました。

三ヶ月ほど掛かった修理も無事終わり、新たに造られた豪奢なドレスを纏った彼女は母の元にやって来ましたが、
母は彼女にはもっとスマートで洒落た服が似合うと考え、紫色のサテンドレスを自作し彼女に着せました。
母は彼女に”Nina(ニーナ)”と名前を付け、娘が生まれたら引き継いでもらってずっと大切にして行こうと思ったそうです。
そして時は流れ、残念ながら我が家には兄と自分のむさ苦しい男兄弟しか生まれず、
母も子育てに忙しくなり、また乱暴な男児に壊されない様にニーナは桐の箱にナフタリンと共に仕舞われ、
いつしか彼女の存在は母を除く家族の誰もが記憶の彼方へと追いやってしまいました。

そして自分が高校生になった頃、ある日突然一組の外国人夫妻が訪問して来ました。
最初に自分が対応したのですが、初めて生で聞くフランス語で話す老夫婦に戸惑っていると、
いつの間にか現れた母が「この家に、自分達の娘が居る筈だ、と言ってるわ」と言うのです。
英語が喋れるのは知っていましたが、まさかフランス語まで通じているとは思わなかった自分が驚いていると
母は何事かを夫婦に言うとすっと姿を消し、すぐに戻って来ました。
そして戻ってきた母の手には、久し振りに見るニーナが抱かれていたのです。

「ニーナ……いえ、アンヌマリーはここに居ます」
そう母がフランス語で言い終えると同時に奥さんが母にダッと駆け寄り、
震えながらニーナを受け取ったと思うと泣きじゃくりながら崩れ落ちました。
フランス語で何かを呟き続ける奥さんの言葉の端々に「アンヌマリー」と言う言葉が入るのを呆然と聞いていると
涙ぐんだ旦那さんが「お礼は如何程で宜しいでしょうか?」と母に尋ねると
母は見せた事の無い不思議な微笑を浮べつつ「どうぞ、お返しします」とだけ答えました。
老夫婦は何度も何度も「メルシー・ボクゥー」と言いながら、大切そうにニーナを抱いて姿を消したのです。
一体何がなんだか理解出来ず釈然としない自分を見て、母は静かに語り始めました。

あの人形……ニーナ、いやアンヌマリーはかつてフランスの貴族の娘が夭逝した際、
彼女の両親が嘆き哀しんで愛娘の遺髪を使って職人に創らせたモノだった。
しかしその後、世代を重ねる内にその貴族は没落し、宝石や絵画などと共に彼女も売られてしまったと。

「な、なんで母さんがそんな事知ってるんだ?
 じゃあ、さっき来た夫婦はその貴族の末裔って事なのか?」
混乱した俺の言葉を聞いた母は
「いいえ、あの方達はアンヌマリーの両親で、今までずっと彼女を探していたのよ。
 私はその事を彼女から……アンヌマリーから聞いていたの。
 ”いつか、私の両親が私を探しに来たら私を返してあげて”って」
「……へ……?」

母はそれ以上何も言わず、また自分も何も聞けませんでした。

そして今年の正月、久し振りに実家に帰った自分がコタツに潜りながらふと床の間を見ると、
そこには純白のドレスを纏ったアンヌマリーがガラスケースに収められていたのです。

「な!な!ななななな!!」

あまりの驚きに固まっている自分を見て面白そうに笑った母は
「去年、帰って来たわ」
とだけ言うと、自分の前に雑煮を置いて台所へと姿を消しました。

ポカン、とアンヌマリーを見詰めていると、一瞬、彼女がウインクした様に感じた俺は
バカ面のままノロノロと雑煮を食べ始めました。


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更新を楽しみにさせて頂いております

いつも楽しく読ませて頂いております。
宮大工氏の話も好きなのですが、風熊さんの話が一番好きです。

第十八話 のお話の舞台の出雲に住んでいるものです。
自分の住んでいる町が、出てきているもので、ドキドキワクワクしました。

これからも、お体に気をつけて下さい。
更新を楽しみにしている、一読者より。

風熊さん、こんばんはminです。
久し振りに風熊さんのお話しを読むことができて嬉しいです。

今回のお話はちょっと切ない内容でしたね。
娘を持つ身になり、親の気持ちと言うものが多少は判ってきたこともあって、
その老夫婦のことを想像するとなんとも不憫な気持ちになりました。
(それと、自分のばあちゃんの姿と重なるんですよ。)

でも、風熊さんのお母さんのお陰で、アンヌマリーも老夫婦も救われたワケで、
もしかしたら、積年の思いを成就したアンヌマリーがその恩返しにお家に戻ってきたのかもしれませんね。
(あるいは風熊さんに惚れているのかも♪)

今年もよろしくお願いいたします。

Re: 更新を楽しみにさせて頂いております

ようが様

閲覧及びコメント、ありがとうございます。
風熊もようが様のコメントに喜び、感謝しておりました。
自分も彼の独特のキャラクターにはいつも励まされ、また癒されています。
そんな彼の優しくまっすぐな心根を慕ってか、彼の前に現れる不思議なモノ達は
愛らしく心和ませるモノか、寂しく哀しい精神を持ったモノ達が多い様です。
また近い内に彼の体験した哀しくも暖かなエピソードをお届けしましょう。

これからもまた、よろしくお願い致します。

管理人”J"

min様

いつもありがとうございます。
こちらのコメントには風熊から返事させて頂きますので、少々お待ち下さいませ。

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